石積みの種類
石積みの技としては、大きく分けて
『野面積』『打込みハギ』『切込みハギ』
の三種類に分けることができるといわれています。
地域性ではなく、建造された年代により用いられる工法が異なります。
野面積み(穴太衆積)
(鎌倉時代~戦国時代初期)
大小の自然石を積み上げていく積み方。大きな石の隙間はより小さな石(間詰め石)で埋めていく。
代表例 竹田城(兵庫県朝来市)
安土城(滋賀県近江八幡市)
打ち込みハギ
戦国時代~関ケ原の戦い
石の接合部分を削ることによって、隙間を少なくした積み方。(関ケ原以前)
代表例 熊本城
松山城(愛媛県松山市)
切り込みハギ
関ケ原の戦い以後
石を直線的に加工し、隙間を無くした積み方(関ケ原以降)
代表例 江戸城
大阪城
穴太衆積の特徴
穴太衆積は、野面積を代表する積み方です。
自然石を自然なまま積み上げるのが穴太衆石積の特徴であるがために
同じ大きさ、同じ形状、同じ重さ の石は存在せず
石面(ツラ)、石目(石の割れやすい方向)
石の上下、石の風化具合 などの事柄から
その都度石の具合を見ながら積んでいかなければいならない為
書文や形では残せず、口伝のみで受け継がれてきた
野面積みは一見粗野に見えますが、堅牢さは比類なきものがあります。
堅牢の秘密を紹介していきます。
強さの秘密~なぜ強いのか~
堅牢さの秘密は石の内側に
その秘密は積み石の比重のかけ方にあって、表面から1/3位奥のところに重力がかかるように設計されており、さらに 土の“水ぶくれによる崩壊を防ぐ”ため、石垣の奥に栗石層、その奥に小石をつめていくなどして”排水をよくする工夫”が施されています。 このように目に見えない部分に穴太衆積ならではの秘伝の技が潜んでおり、それが何百年の風雪に堪え得る堅牢さを生み出しています。
石の声を聞き
石に従うことが仕事です
石の集積場へ行き、たくさんの石の周りを1日か2日かけてゆっくりとぐるぐる周りながら、一つひとつ違う石の 性格を覚えていきます。
そうして頭の中に絵を描きながら配置を組み上げていくのです。実際に石積みに着手するときは、すでに頭の中に設計図が ほぼ出来上がっているわけです。石を見分けるというより、石と対話しながら石の声に耳を傾けていく。 石と長く付き合っていると石のほうから教えてくれるようになるのです。穴太衆積の技法はすべて口伝されてきましたが、 それは秘技だからというよりも文字では表現できないからです。
穴太衆の秘技を解析~本当に強いのか~
古きをたずねて新しきを知る
解析データが示した伝統の技
長い歴史が堅牢さを証明している穴太衆積ではありますが、現代の建築基準に適合するかどうかの実験数値データ が必要。そこで石垣が積まれる予定地に穴太衆積とコンクリートブロックによる擁壁を並べて実作し、積荷装置で土圧をかけて 擁壁の変位を測定する実験がおこなわれました。
最大荷重の基準は250トン。 より過酷な条件を満たすためにジャンボジェット機1機分という現実にはありえない重さをかけました。
新名神高速道路での実験
コンクリートより強い?
実験開始からほどなく、穴太衆積の擁壁の中からピシピシという耳慣れない音が聞こえてきました。 石積みは部分的に最大13センチまで大きく変位しましたが、結局250トンの重さを支え続けました。 一方コンクリートブロック擁壁は変位こそ5.5センチと小さいものの、約200トンまで荷重した時点で、突然胴込めした 厚さ30センチのコンクリートがバリッと大きな音とともに割れてしまいました。石積は変位は大きいものの、コンクリート以上 の耐荷力が確認されたのです。
最先端技術でデータに現れた
「しなやか」な耐荷性
京都大学大学院の大西有三教授のグループにより、不連続変形法というシミュレーションで穴太衆積の構造上の 特性が解析されました。石積の構造を忠実に再現したモデルを作成し積荷時の状態をシミュレーション。
結果は、認証試験の実測値と見事に一致しました。さらに阪神・淡路大震災クラスの地震の揺れの数値を入力してシミュレーション。 この結果も大きな変形はあるものの、逆にその変形で石積がしまり、石積の崩落などの擁壁の機能破壊までは起こらないという 良好なデータが得られました。